北風と太陽/35  2006/02/09

そうだ、と太陽が頷くが早いか、風が横から割って入る。
「さっき、森に人間が入って来ただろ。若い男と、その上着を奪って逃げた奴らだ。どこにいる!?」
森の精はそのあまりの剣幕に驚いたようだったが、太陽が全ての事情を説明すると快く応じてくれた。
「解ったわ。あの大臣の思い通りになるのは、私も気に入らないもの。……森を切り開いて、無駄な狩りをするのよ」
少女は顔をしかめると、深緑の両目と小造りな白い両耳を研ぎ澄ました。
やがてその目と耳に、遠く梢の向こうの景色と音が入ってきた。
「ああ……いた」

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