北風と太陽/36  2006/02/09

「どこだ」
風が息せき切って尋ねる。
「泥棒さん達はもう出口の近くよ。……それから王子様は、可哀相にこの向こうでまだ迷ってるわ」
妖精の目には、薄暗い森の中でひとり彷徨う少年の姿が映っていた。
大きな赤い瞳は疲れに淀んで、涙が滲んでいる。
妖精は思わず、その可憐な顔をしかめた。
「居場所が解ったら、あとひとつ頼みがあるんだが」
と、背後で太陽が言った。
「なぁに?」
「あの子を導いて、森から出してやってくれ」
少女はそれを聞くと、にっこり微笑んで頷いた。
「言われなくてもそうするわ」

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