北風と太陽/37  2006/02/10

「ありがとう。……さて、最後は」
太陽はひとり手持ち無沙汰な様子の風の青年を見た。
首輪をかけられた野犬のようにうずうずしているのが、手に取るように解る。
その姿に内心小さく笑いながら、言った。
「お前の仕事だ。下っ端どもから王子様の宝物を取り返してやれ。まだ追いつけるだろう?」
「!」
風は嬉しそうに琥珀色の瞳を輝かせると、元の姿に戻るが早いか、森の出口へ駆けていった。
突風が木々を盛大に揺らし、枝をざわつかせる。
「……騒々しいこと」
妖精が肩をすくめて呟いた。

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