北風と太陽/38  2006/02/10

***

風はすぐにその一団を見つけることが出来た。
森の出口まで飛んでゆくと、白い馬を引いた数人の男達が見える。あれは間違いなく少年の馬だ。
(……)
ふん、と、風は首を捻った。
さてどうするべきか。目的の上着はきちんと畳まれて、先頭の男の脇に抱えられている。
地上から風のいる上空に、微かな話し声が聴こえてきた。
「驚いたな。あの先代の息子と言うからどんなに勇ましいかと思っていれば」
「まだ子供だったぞ。……大臣閣下も随分臆病だな。あんな小僧一匹が怖いのか」
男のひとりが声を立てて笑う。

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