北風と太陽/41  2006/02/15

突風がもう一度唸りを上げたが、そう易々とはいかない。
(……!)
痺れを切らした風は、片腕を上げた。
槍を投げるかのように、男の腕目掛けて振り降ろす。
次の瞬間、男の手に、空気の刃に切り裂かれた赤い線が一筋走った。
「ぅ…っ!?」
思わず、腕が緩んだ。
その隙を突いて、上着が地面につく前に上へと吹き上げる。
上着は音もなく風の腕の中へ落ちた。
「くそ…!!」
男達が辺りを見回す。
風は、再び人間の若者の姿に変じると、砂埃に紛れて街道へと降りた。
やがて混乱が収まり、風は凪ぐ。

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