北風と太陽/43  2006/02/16

「知るか。俺はあいつをこれ以上傷つけたくないだけだ。……とっとと消えやがれ、下衆ども」
若者の目に燃える光は、人ならぬものの輝きを宿している。
その輝きに圧倒されたかどうか、男達は一様に恐怖の色を顔に滲ませ、肩を竦めた。
そして、捨て台詞も残さず街道の向こうへと逃げて行ってしまった。
「……」
風は、溜息を吐いた。
あんな忠誠心の欠片もない輩を、よくも差し向けたものだ。
人望が薄く猜疑心が強い大臣はやはり、国を担う器ではないらしい。
―――自分が口を出しても仕方のないことだが。

がさ…っ

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