北風と太陽/45  2006/02/18

だが、やっと事の顛末を理解したらしい。
強張っていた表情がふっと緩んだかと思うと、地面にへたり込んでしまった。
母の―――今は父の形見にもなってしまったそれを、愛しそうに抱きしめる。
緊張の糸が切れたのだろう。ぎゅっと閉じた瞼の端から、透明な涙が溢れた。
「……ありが…とう…ござい…ます……」
―――本当に、まだ子供の顔をしている。
こんな優しい生き物に、運命は随分重い荷物を背負い込ませたものだ。
風は、少年の髪に手を伸ばした。
「……?」
少年は涙を拭うと、もう一度風の顔を見た。

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