北風と太陽/46  2006/02/18

この人は誰だろう。
知らない相手なのに、少しも恐れや緊張を呼び起こさない。
まるでずっと昔から傍にいたような―――
風は地面に座って、少年と目線を合わせた。
「名前は」
「……ジョー」
「そうか。……なぁ、ジョー」
琥珀色の瞳をしている。
少年はそう気付いて、まるで夕焼けのような綺麗な色だと思った。
「俺はお前の味方だ。だから教えてくれ。……どうして、国へ戻ろうと思った?」
あのまま、孤児院で暮らしていた方が幸せだったかもしれない。
血筋のことなど何も知らず、陰謀にも巻き込まれぬままでいた方が。

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