北風と太陽/47  2006/02/21

例え貧しくとも、優しく真っ直ぐな少年には自ずと幸せが訪れただろう。
「王様になりたいのか」
少年は強く首を横に振った。
「お袋さんの敵討ちがしたいか」
少年はこれにもうんとは言わなかった。
「……僕は」
うつむいたまま、上着を抱きしめる手に力が篭もる。
「僕は、王位にも復讐にも、興味なんかありません。……ただ……」
「ただ?」
「……お母さんを、もう一度国へ帰してあげたかっただけなのに……」
少年の目からまた涙が零れた。
自分は何も知らなかった。

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