北風と太陽/48  2006/02/21

無力な子供で、母を守ることも出来ずに逝かせてしまった。
父にもそれを詫びることが出来ないままだった。
国などいらない。地位もいらない。
これはもう、自分には必要ないものだ。
ただ、持って行って、墓所の父に返さなければいけないと思った。きっと宿っているであろう、母の魂と一緒に。
「……なのに……」
風は、少年の涙を指で拭ってやった。
温かな涙だ。
優しい少年は血ばかりか、心まで気高いのだと風は思った。
「ジョー」
「……っ」
赤い髪の青年は、長い脚を曲げて少年のうつむいた顔を覗き込んだ。

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