Il Deserto Rosso/6  2007/01/22

ドアを叩く音が聞こえて、王子は振り返った。
「お目覚めでございますか」
「ん……今起きたところ」
「おはようございます。お食事と、お召しかえを」
召使いが微笑んで、食事の乗った銀の盆を捧げる。
「良い天気ですよ。今朝は市場も賑やかで…」
と、そこまで言って、彼ははたと口をつぐんだ。
外の様子を見ることの出来ない王子に、その様子を話しても、憧れに拍車をかけるだけだ。
酷なことをしてしまったと、うつむく。
「あの…」
だが王子は、くすりとひとつ笑っただけだった。

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