Il Deserto Rosso/7  2007/01/23

「そう。良かったね。美味しい果物は手に入った?」
「は…はい、それは、もう」
召使いはひとつきりの円卓の上に盆を置くと、少年の髪を梳くために櫛を取った。
柔らかな紅茶色の髪は、少しだけ色あせたように見える。
(……)
王はまだ、王子を解放しようとはしない。
西の塔から見えるのは遥か遠くに広がる砂漠と、王宮の庭だけだ。
その空虚な砂漠にさえ、時折旅人やキャラバンの列が渡るのを、王子は憧れを込めて眺めるのが常だった。
窓枠に止まる小鳥たちを、王子の白い指があやしている。

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