Il Deserto Rosso/9  2007/01/24

その手と声が奏でる異国の歌はたちまち評判になり、その噂が王の耳にも届いた。
そこまで人々の心を動かす歌とはどんなものか、興味をそそられた王は、彼を王宮へ招く事にしたのである。
「へぇ…」
ここ何年も、華やかな音楽になど無縁だった王子は、目を丸くして召使いの話に聞き入った。
「きっと陛下も、今夜は広間へ出るのを許して下さいますよ」
「……うん」
王子はうなずいて、想像を巡らせた。
少年の心に僅かに残っている、外の風景。

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