Il Deserto Rosso/10  2007/01/24

少年の心に僅かに残っている、外の風景。
青くて広い空と明るい太陽、夜には満天の星も見えるに違いない。鳥や獣は自由に砂漠を駈け、泉には魚達が泳ぐ。
街ゆく人々は微笑み、時には踊り火を囲む。
旅人はそんな外の世界から来たのだろう。
そしてそれを、歌に綴って皆に伝えている。
どんなにか美しいに違いないと、思った。

***

篝火が紅に燃えている。
玉座に腰を下ろした王は、にこりともせずに、広間の中央にひざまづく青年へ声をかけた。
「お前が、そうか」

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