Il Deserto Rosso/12  2007/01/25

鳥や獣は自由に砂漠を駈け、泉には魚達が泳ぐ。
街ゆく人々は微笑み、時には踊り火を囲む。
旅人はそんな外の世界から来たのだろう。
そしてそれを、歌に綴って皆に伝えている。
どんなにか美しいに違いないと、思った。

***

篝火が紅に燃えている。
玉座に腰を下ろした王は、にこりともせずに、広間の中央にひざまづく青年へ声をかけた。
「お前が、そうか」
蒼い瞳が銀髪の向こうから、何処か冷たい光を湛えて見つめている。
「はい」
しかし青年は、物怖じもせず頷いた。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。