Il Deserto Rosso/14  2007/01/26

一国の王の前で、なんと堂々としていることか。
だが、音楽家として大勢の前で腕を披露することは彼らの誇りでもあるのだろう。
「それでは、謹んで」
青年は立ち上がると、脇に抱えていた小さな竪琴をかき鳴らした。
繊細な文様を施した銀で出来た竪琴は、三日月のようにきらきら煌いていた。
―――それは不思議な旋律だった。
竪琴の音に乗せて綴られる物語。
目を閉じれば、古の恋物語が脳裏に浮かんでくるほどに、青年の歌は美しかった。
さらさらと流れる小川のほとり、高貴な姫君が旅人に出会い恋をする。

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