Il Deserto Rosso/16  2007/01/27

「お前に褒美を与えねばなるまい。何が望みだ?叶えられるものならば、何でも言ってみるがいい」
青年は首を傾げて、ほんの少し考えていた。
だがすぐに嬉しそうに微笑むと、竪琴を床に置き、もう一度ひざまづいて王を見上げた。
「それでは陛下、どうか私めに陛下の屋根をお貸し下さい」
「屋根…だと?」
「はい。私はその日暮らしの旅人、美しい着物や宝石は何の役にも立ちません。ならば、一生に一度だけ、この素晴らしい王宮で朝を迎えてみとうございます」
青年の目は真摯そのものだ。

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