Il Deserto Rosso/19  2007/01/29

後にはただ、廊下へ暗い闇が影を落としているのが見えるだけだった。

***

王子は夜空を見上げていた。
広い王宮の片隅にある塔には、広間のざわめきも、異国の若者が奏でるという音楽も聞こえてはこない。
ただ枝を伸ばした木の上で囁く夜鳴き鳥の声と、優しく卵色に光る満月だけがせめてもの慰めだった。
(……)
王は今夜も塔から出るのを許してくれなかった。
ここへ閉じ込められてから、もう何年経っただろう。
滅多に違う風景など見えない、小さな窓。

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