Il Deserto Rosso/20  2007/01/29

オアシスの水の冷たさも、もう忘れてしまいそうだ。
膝を抱いて体を縮め、寝台の上に寝転がって、そのまま眠りに落ちようとした。
涙が一筋、頬を伝う。
思い描くのは遠い記憶ばかり。
夢に見るならだけなら許されると思って、毛布を被った、その時だった。

ピィン…

弦を弾く細い音。
はっとして飛び起きると、王子は窓から身を乗り出した。
中庭の木の下に、誰かが立っている。
月明かりに照らされた薄闇の中で、その姿はぼんやりと不確かで、はっきりと捉えることが出来ない。

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