Il Deserto Rosso/21  2007/01/30

「こんばんは」
ふと、人影が振り向いて、こちらへ声をかけた。
久方振りに聞く他人の声に、思わずびくりと体が跳ねる。
「誰…?」
この庭へ立ち入ることが出来るものは誰もいないはずだ。
驚いて覗き込めば、人影は悪びれもせず言った。
「ただの旅人さ。あんたこそ、こんないい夜にそんな所で何をしてるんだ?外は綺麗な月が出ているのに」
顔は判らないけれど、笑ったようだった。
「僕は……この西の塔の住人だよ。君、どうやってここへ」
「住人?」
声は質問には答えなかった。

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