Il Deserto Rosso/23  2007/01/31

王子が久しく吸っていない、熱をはらんだ空気。
「ちょっとした好奇心ってやつさ。それがなけりゃ旅人は務まらない。……それに」
窓枠からふわり部屋の中へ降り立った青年は、不敵にも笑った。
ふたりの距離は今や、体温さえも感じられるほどだった。
「そのお陰でいいものを見れたしな」
「……っ」
その時初めて、王子は青年の顔をまともに見た。
金に赤を宿した髪は、昔一度だけ見た、海の向こうの国に住むという鳥の羽根に似ている。
「改めまして、ご機嫌麗しゅう、王子様」

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。