Il Deserto Rosso/25  2007/02/02

じりじりと距離を開けようとしていた王子に向かって、青年は屈託のない笑顔を見せる。
「それとも、外の人間が怖いのか?」
「違うよ、でも」
「でも?」
王子はごくりと固唾を飲んでから、ふっと溜息をついた。
―――まだ胸の高鳴りは治まらない。
「初めてなんだ。……知らない人が此処へ来たのは」
歌い手は王子が今まで出会ったどんな人間とも違う。
王子がそれきり黙ってしまうと、青年は窓枠に腰掛けながら、ふと尋ねた。
「そういえば、王子様は広間へも来なかったな?」

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