Il Deserto Rosso/29  2007/02/04

ささやかだけれど、こんなに心から笑ったのは何年振りだろう。
凝り固まっていた感情が解けていくのは心地よい。
「ジェットは何処から来たの?」
「何処から?……あぁ、生まれは、もっとここから遠い所」
彼は王子の横に腰を下ろすと、窓の外を眺めながら言った。
「どんな国?」
一度興味を持ってしまえば、あとは花が水を吸うようなものだ。
もともと好奇心の強かった王子は、目を輝かせて彼の話に聞き入った。
「この国と同じさ。人は優しいし、水も綺麗だ」
「みんな、君みたいに歌が上手い?」

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