Il Deserto Rosso/31  2007/02/06

喉の奥から涙が湧き上ってくるような気がして、うつむいた。
離れたくなかった。
やっと見つけた光が、見えなくなってしまう。
「……嫌だ」
「ジョー?」
「嫌だ、ここにいて」
シーツをぎゅっと握り締めて、王子は震える声で呟いた。
青年は暫く黙っていたが、やがて、ふっと微笑んだ。
「ジョー、今度は今度だ。永遠にさよならするって意味じゃないんだぜ」
「……でも」
握り締めていた手に、青年の手が触れた。
彼はゆっくりとその拳を解いてやると、自分の両手で優しく包み込む。

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