Il Deserto Rosso/32  2007/02/09

「また明日の夜、会いに来る。だから今度って言ったんだ。楽しみに待っててくれた方が、俺も嬉しい。……約束、な」
「約束…?」
うっすらと涙の滲んだルビーの瞳が、青年を見上げた。
「うん。……あぁ、そうだ」
青年は懐を探ると、服の中からなにかを取り出した。
「これ、やるよ」
そう言って王子の掌へ乗せる。
かすかにひやりと冷たい、銀色の塊。
「櫛…?」
それは、竪琴と同じ文様が施された、美しい櫛だった。
きらきらと輝く華奢な櫛は、まるで小さな月のようだ。

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