Il Deserto Rosso/33  2007/02/11

「この櫛とこの琴は、夫婦なんだ」
王子が首を傾げると、青年はそれに、もう一度自分の掌を重ねた。
「だから絶対に、離れ離れにはならない。この櫛と琴が、必ずお前と俺を結びつけてくれる」
「ジェット…」
「おやすみ。……また、明日」
青年は窓枠に飛び乗った。
卵色の月がふたりを見下ろしている。
やがてその掌が離れてしまうと、王子の指が空しく宙を撫でた。
窓枠から身を乗り出せば、庭へ降りた影がこちらへ手を振っているのだけが見えた。
「約束だよ!……明日!」

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