Il Deserto Rosso/35  2007/02/14

あれは夢だったのかと思えるほど、優しく幸せな光景。
シーツの上へぱたりと落とした手に、微かな冷たい感触が触れて、王子は完全に目を覚ました。
それはあの銀の櫛だった。
では、夢ではなかったのだ。
飛び起きてそれを握り締め、王子は開け放したままの窓の外を見上げた。
どうか今夜、また出会えますように―――
ただ強く祈った、その時だった。
「王子さま!!……王子さまっ!!」
突然、激しく扉を叩く音がした。
召使いの、殆ど叫び声のような呼び声に、慌ててドアを開ける。

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