花手紙4通目「百恋1-3」06/06/09  2006/06/09

竹野です



「さて、どこ行こうかな」

食器を一通り流しに持って行ってからラジカセのスイッチを入れた。赤い古いラジカセは母が捨てようとしていたのを無理やり貰ってきた物だった。これがなかなか優れものでテレビもほとんど受信出来るのだ。流れてきたのは今流行りの男性歌手の甘い声。職場でもたまにラジオから流れてくるこの曲はあたしの最近の一番のお気に入りだった。

ふと毎日食べに来るサラリーマンの顔が浮かぶ。思わずにまっと嬉しくなってあたしは笑顔になった。

あたしの職場は小さな町の定食屋さんでお店はすごく汚いんだけれどお袋の味というような懐かしい煮物なんかを平日の昼間から夜まで格安の定食で出している。
近所に大きな会社がいくつもあるから昼は戦争のような賑わいで、唯一若いあたしは一応看板娘だ。
思い出し笑いをしたサラリーマンは普通の人とはすこしずれた時間にやってきて、いつも同じ席で、いつものトレードマークを持ち込んでご飯を食べていく。

この前もそうで、でも今流れてる曲がラジオから流れたら弾かれたように顔を上げていた。



夜中にごめんなさい。今バックナンバー用のページ作ってます。


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