蒼い彗星 裏 no.1 / 13/06/12  2013/06/12

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「何度でも繰り返す」1/2

己の失敗に何度も後悔してきたが、今回もそうだった。
工藤は起きぬけ一番に自分のいる場所がどこか悟り、隣に眠る見知らぬ男の存在に、喉がきゅうとなるほど肝が冷えた。
知らない男の知らないベッドでまたもや素っ裸で眠っていた。
そこらじゅうに投げ捨ててあるたくさんの丸めたティッシュで、昨晩何をしたか知れる。
またやった!
しかも、頭はずきずきと痛み、目の芯に鋭い痛みが突き刺さる。吐く息も酒臭い。
また、酒に泥酔して、男とやってしまった。やられたのかやったのか、この際問題ではなく。問題なのは、いつも違う男としてしまうということだ。
工藤はため息をつく。
いや、違う男とするのはいい。恋人がいないのだから、不特定多数でも問題はない。ただ、酔うと見境がない自分に呆れてしまうだけだ。
隣に眠る男は枕を抱きしめ、うつ伏せになっている。脱色した長めの髪から細いうなじがのぞいている。背中の流線がそのまま毛布の中へ隠され、なだらかな臀部の隆起へと続いている。肩甲骨がくっきりと削りだされ、やわらかな影を作っている。枕を抱きしめる二の腕は引き締まって細く、薄い体毛がのぞいている。そっと指でなぞってみたくなる、そんな体だった。
顔が見てみたい、と工藤は思った。
けれど、枕に埋(うず)められた顔はわずかに頬の線と閉じられたまぶただけが分かる程度だった。それだけで、隣に眠る男が存外美形だと気づいた。
きれいな男に見とれるのはテレビの中だけかと思ったが、そうでもないらしい。
工藤はしばらく隣で熟睡している男を見守っていた。

「酒、禁止にすればいいんじゃね?」
昼過ぎに、ラーメン屋で美形の男が言った。
美しい顔がズズズと音を立ててラーメンをすする。工藤は思わず、その口元に見入ってしまう。
どっちがやってやられたか、そんな劣情を催させるふっくらとした唇。
酒に飲まれて記憶が飛んでいることがとても腹立たしい。工藤は内心舌打ちした。酒に酔ってなければ誘いもしないだろう高嶺の花。そんな雰囲気を持つ男だった。
「そんなこと言っても、止められないんだよ」
辞める気もなく、工藤はぼやいた。
「そんなこと言ってさぁ、何度も繰り返してると、ろくな目にあわねぇよ? 病気うつされたりしてさ」
美形の男は思ったより口が悪い。
「怖いこと言うなよ」
「マジな話、昨日、俺がコンドームつけなけりゃ、わかんなかったんじゃね?」
いきなりきわどい話に移って、工藤の心臓がドキリとする。
「正直、覚えてないからさ……」
周囲を気にして、工藤は声をひそめるのに対して、美形の男は気にも留めない様子で話し続ける。
「俺もしたし、あんたもしたけど、それも覚えてねぇの?」
工藤の喉がまたきゅうと鳴った。



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