蒼い彗星 裏 no.2 / 13/06/12  2013/06/12

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「何度でも繰り返す」2/2

「声が大きいよ」
「マジ、朝起きてあんたしかいなかったのは驚いたけど」
「え?」
工藤は思わず、美形の男の顔を凝視してしまった。

美形の男――八代(やしろ)とすでに泥酔していた工藤は、あるゲイバーで意気投合して、さらに深酒に精を出していた。二人はバーテンダーをしている青年に猛烈な誘いをし続けて、閉店後、青年を二人で八代のマンションに持ち帰った。
まぁ、そこで繰り広げられた隠微な世界は割愛するとして、深酒をしても意識のあった八代が面倒見よくコンドームをつけさせ、いわゆる三つ巴で青年をかわいがったというわけだった。

「あ、そう……」
工藤は頭を抱えた。だったら、今まで目の前の美形に胸をときめかせていた自分は何だったのか……。
二人で行ったゲイバーがどこにあるのか、結局二人とも思い出せず、工藤は八代とメールアドレスだけ交換して別れた。
「ま、もう、二度と会わないよな……」
そんな思いがあったから、メールアドレスの存在自体忘れてしまった。

あれから半年。
工藤はまたも見知らぬマンションで目覚めた。言葉にならないうめき声を発して、工藤は頭を抱える。
またしでかした……。今度は誰だ?
しかも最悪なのは、今回は腰に違和感があるということだ。
ベッドの中には工藤しかいない。相方になった男はどこかに行っているようだ。ならば、あとくされなく消えたほうがいい。むしろそうしたい。
工藤は床にばらまかれた衣服を身につけて、そっとドアを開けて部屋を出た。玄関を探し、靴を履いていると、背後から声をかけられた。
「あれ? 工藤さん、帰っちゃうの?」
どこかで聞いた、懐かしい声。
工藤は恐る恐る振り向いた。
風呂上がりの濡れた体にタオルを掛けただけの美形の男、八代がにやにや笑って立っていた。
「あ、まぁ、帰ろうかな、と……」
言葉に詰まって、立ち尽くす工藤の腕を取り、八代が言った。
「また二人きりで会おうね。俺、工藤さん気に入ったから」
腕に絡まる八代の指が、工藤の情欲を刺激して、腰が痛いにもかかわらず、部屋を出ていく気が失せ始める。
八代とどこで再会し、どこからこんな展開になったのか、さっぱり思い出せない。
工藤はもう二度と酒は飲まないと、心に誓った。



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