蒼い彗星 裏 no.13 / 13/07/03  2013/06/21

「目を閉じて貴方の吐息を」

匠は自分をじっと見つめる玲二の視線に気づいた。
二人はソファに座り、テレビをつけてくつろいでいた。特に話すことがなく、玲二がテレビ番組のチャンネルをひっきりなしに変えている。そのうち、情報収集もすんだようで、大仰な深い息をつき、玲二がソファに深く座りこんだ。その様子を匠は肌で感じ取りながら、新聞に目を通していた。
あまりにじっと見つめるものだから、照れくさくなり、匠は顔を反対側にそむけた。
「あのさ、匠って芸能人の伊藤英明に似てるよな」
予期せぬ言葉に、匠は玲二を見返す。どこにでもいるような平凡なこの顔を捕まえて、芸能人に似ているなど、玲二の目は節穴かと思った。
「あ、でもさ、韓流スターのイ・ビョンホンにも似てる」
「そうか……」
何と答えていいかわからない。しかもうっとりした目で言われると、何となく恥ずかしい。どちらの俳優もうろ覚えにしか思い出せない。玲二と違い、俳優より女優に目が行くからよくわからないともいえず、気まずい咳払いをし、せわしく音を立て、新聞のページを繰る。
そこへいきなり玲二が倒れ込んで来て、匠の腿に頭を置いた。下から若々しい玲二の無邪気な目が覗き込む。
「照れてんの?」
匠は玲二の仕草にドキリとしながら、それを隠そうと新聞を顔の前に寄せた。
「照れてない」
「照れてるよね!」
さもおかしげに玲二が含み笑った。
「照れてないって」
「じゃあ、顔見せてよ」
なんだか今日の玲二は甘えん坊だ。匠はそろりと新聞を脇に下ろして、玲二の顔を見た。
何となく照れ臭い。玲二のまっすぐな瞳を見返せなかった。
「顔赤いよ? そういうとこ、匠、かわいいね」
玲二がにこりと微笑んだ。
やけにじゃれついてくるので、反対に訊ねる。
「今日はいつもより甘えてくるな」
  



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